貴方の見ているドメインは

ドメイン www.fuerjefe.com

このページについて

    「すまんでしたな、長話をして」

    「あれらしいのよ」

    「さうです。――どうかなさつたかね」

    と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、

    「畜生、おぼえていろ。」

    これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。

    「ですが、何とも手のつけやうがない」

    房一は持前の人慣れた愛想のいゝ微笑をうかべていた。それは水面にできた波紋がゆるく輪をひろげるやうに、彼の厚い醜い唇からはじまつてしだいに、顔全体をつゝみ、つひに容貌の醜さを消してしまふものであつた。

    房一には連れが二人あつた。

    「さうですか」

    「さうだ、鍵屋の法事へ行くんでね。さつきは、君にさう云ふのを忘れていたが――まあ、上りたまへ」

    「何だらう?」

    柳里恭りゅうりきょうの『雲萍雑志うんぴょうざっし』のうちに、こんな話がある。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40